2023-02-18

Zoom-NIKKOR 43~86mm f3.5

 前回までの記事「僕が愛してやまないカ」「Nikon F2 フォトミックかつての愛機 Nikon F2 フォトミックについてお話ししたついでに、僕の人生で最初に買ったレンズ Zoom-NIKKOR 43~86mm f3.5についてもふれておこうと思います。 

 フィルムの値段高騰の折、フィルムカメラの出番はめっきりと減ってしまったというか、僕の場合はここ数年まったく使っていませんが、このレンズは「NikonFマウント」なので、Fマウントのデジタル一眼レフであれば、問題なく使えます。現在、僕が使っているデジタル一眼レフはd200という、これまたかなり古いカメラなんだけど、場面に応じてマニュアルのオールドレンズをつけて撮ったりしています。

 ちなみに、マウントとはカメラのボディとレンズの接合部のこと。最近登場したNikonのミラーレス一眼は「Zマウント」になっているので使用できませんが、ニコンでは長年Fマウントを採用し続けていて、何十年も前に製造されたマニュアルのオールドレンズをデジタルカメラで楽しめるのが何ともうれしいところです。古いレンズは値段もこなれているものが多いので、安く、気軽に一眼レフカメラを始めたいという方には、中古のFマウントのボディに中古のオールドレンズという組み合わせはかなりおすすめ。こんな楽しみ方ができるのは、Nikonならではです。

 ではそろそろ、本題に入りますね。このレンズは、その焦点距離から「ヨンサンハチロク」とか「ヨンサンパーロク」と呼ばれていました。標準域をカバーしてはいますが、ワイド側の43mmという焦点距離は広角というにはいささか疑問。そして、テレ側の86mmについては望遠には程遠い。当時、ほかのレンズを買う余裕がなかったので、これ1本でなんとか撮影していましたが、「もうちょっと画角が広ければ…」「もうちょっと望遠がほしい…」といった場面が何度もありました。

 しかし、この中途半端さがなんともいい、ということにあるとき気づいたんです。登山など、荷物の重さをなるべく軽くしたいときは、何本もレンズを持っていくことはできません。そして、被写体と距離をとったり、近づいたりなどが簡単にできない場面も多く、写す際の立ち位置には当然制限があるので、ズームレンズが重宝します。そんなときに、この中途半端な焦点距離が生きてくるんです。

 完全な広角ではないけど、そこそこ広角感が出て、バッチリな望遠ではないからちょっと小さめではあるけれど、そこそこ大きく写せる。レンズ自体の大きさも、ズームにしてはそれほど大きくないのでそれほどかさばらない。この中途半端な「そこそこ感」が、頼れるヤツって感じ。

 そんな「そこそこ感」満載のレンズなのですが、Nikonのホームページに掲載の「ニッコール千夜一夜物語 第四夜」にはこんなかっこいいキャッチコピーが踊っています。 

「小型化、低価格化で実用的な写りをめざした国産初の標準ズームレンズ」

 同記事によると、1963年に発売された当時は「広角レンズでさえ設計が困難といわれていた時代である。世界初のズームレンズはまだまだ『特殊レンズ』であった」とのことで、そのコンパクトさは非常に画期的で、随所に低コスト化と小型化の工夫が施されているようです。

 このレンズは、当時競合他社を含めても安価で小型の唯一の標準ズームレンズだったこともあり、非常に良く売れたレンズである。その後このレンズは、11年後の昭和49(1974)年にマルチコート化され、昭和51(1976)年には周辺性能や周辺光量を改良した8群11枚構成の新光学系に生まれ変わり、さらに多くのユーザーの方々に愛用されている。そして昭和52(1977)年にAI方式の「AI Nikkor」としてモデルチェンジされ、実に「Nikon F3」や「Nikon EM」の時代まで生産され続けたのである。

 確かに単焦点レンズや最新のズームレンズと比較すれば性能面でいささか見劣りのするレンズである。しかし、“標準ズームレンズ”というジャンルを作り出し、ズームレンズの利便性と楽しさを一般に知らしめた功績は高く評価されるべきであろう。また、うまく使えば今のレンズにはない味わい深い描写の得られるレンズであり、今なお実用価値は高いと感じる。鏡筒にひげ状に刻まれたカラフルな被写界深度目盛りが優美な、ニッコールの名レンズのひとつである。

Nikonホームページ「ニッコール千夜一夜物語」第四夜 Zoom-NIKKOR Auto 43-86mm F3.5

 そうなんです。昔のNikonのマニュアルズームレンズレンズには、被写界深度を示すカラフルな「ヒゲ」みたいなメモリがついています。絞りリングのf値にも色がついていて、このヒゲの色はf値ごとに刻まれています。F2には被写界深度を確認できるボタンがついているので、撮影の際にあまり気にしたことはないものの、このカラフルなラインが「昭和チック」で、なかなかいい味を出してくれています。

 今ではビックリするような安い値段で売られていたりするので、オールドレンズに興味のある方は手に取ってみてはいかがでしょうか?

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