Nikon F2 フォトミック
前回の記事「僕が愛してやまないカメラ」で、僕のかつての愛機についてお話ししたので、もう少しNikon F2 フォトミックについてふれてみようと思います。
ニコンのフラッグシップ機Fシリーズの2代目となるF2に、露出計を内蔵したのがF2フォトミック。F2が発売されたのが1971年なので、もう50年以上も前のカメラということになります。完全機械式なので、シャッターを切ったり、フィルムを巻き上げたりするのには電池は不要。ただ、フォトミックには露出計がついているので、露出計を動かすためにボタン電池2個が必要ですが、なくても写真は撮れちゃいます。当然ながらオートフォーカス機能は使えません。マニュアルレンズのフォーカスリングをぐるりと回して焦点を合わせます。
露出もレンズについている絞りリングと、ボディ本体についているシャッタースピードダイヤルをカチャカチャ回して好みの露出に合わせます。その際に必要になるのが露出計。下の写真のペンタ部の上に見えているのが指針式の露出計です。ファインダーをのぞくとこの露出計が下部の中央、左に絞り値、右にシャッタースピードが表示されていて、露出計の針がちょうど真ん中にある状態が適正露出となります。この露出計を見ながら、絞りリングとシャッタースピードダイヤルを回して、露出補正が必要な場合はプラス方向、マイナス方向への針の振れ具合を見てシャッターを切る。フィルムのISO感度を合わせるダイヤルに露出補正のためのダイヤルがついていますが、僕はそれを使わずに、露出計の針の振れ具合(1/3段だと針の太さ1本分ぐらい)だけで撮影していました。
そして、レンズを交換すると「ガチャガチャ」というひと手間が加わる。マニュアルのAiと呼ばれるレンズには絞りリングと連動する通称「カニ爪」というものがついていて、これを露出計が内蔵されたペンタプリズム部からニョキっと出ているピンに引っ掛けて最小絞り値まで回すことで、レンズの開放f値を露出計にインプット。あとは、絞りリングを回すたびにピンが連動して、絞り値の情報を露出計に伝えます。この「ガチャガチャ」を忘れてシャッターを切ってしまうと、露出計が示す情報は全くのデタラメなので「なんじゃこりゃ」という仕上がりになります。何枚か撮った後に「ありゃりゃ」と気づくこともあって、「またやっちまった~」とブルーな気分になることもしばしば。
フィルムを装填して裏蓋を閉め、フィルムカウンターがゼロになるまで空シャッターをを切って巻き上げる。そうそう、フィルムの巻き上げも当然手動。1枚撮るごとに巻き上げレバーを引いて巻き上げ、フィルムのすべてのコマを写し終えたら、今度はパトローネにフィルムが収まるまで巻き戻しクランクを使って巻き戻し、最後に裏蓋を開けてフィルムを取り出す。すべてがオートで写せる今のカメラとは全く真逆、すべての工程に撮影者の手が必要です。
記録するのはフィルムなので、多くても1本で撮れるのは36枚。デジタルカメラだったら何枚撮ってもタダだけれど、フィルムの現像代、印画紙へのプリント代などもかかるので、そうそうバシャバシャ撮れない。だから1枚1枚大切に撮る。「この瞬間を待ってました」というタイミングでシャッターを切る。「写真は一瞬を切り取る」とよく言うけれど、まさにそんな感じで撮っていた。
「ピントは人物であれば目に合わせてと…」「露出はこれくらいかな…」ってやっているうちに、被写体が移動してしまったり、光の加減が変わってしまったりで、なかなかシャッターを切れないときもままあるんだけど、そんなすったもんだが写す楽しみだったりする。
シャッターを切った画像も、今であればその場でプレビュー画面でその場で確認できるけど、フィルムカメラでは現像するまで現物を確認できない。だからこそ、仕上がったフィルムやプリントを見て、思った以上の一瞬を切り取れたときのうれしさはひとしお。そんな楽しみを教えてくれたカメラが、このF2フォトミック。機械式のシャッター音も「写真撮ったぞー」っていう感じで、今思えばシアワセの瞬間だった。
フィルムの生産はめっきり減ってしまって、今ではカラーネガでも1本1,000円を超える状況はなんともさびしい限り。自宅の冷蔵庫には、数年前に買った富士フイルムのリバーサルフィルム「ベルビア」とコダックのモノクロフィルム「TRI-X400」がまだ数本残っているけど、とっくに使用期限は過ぎてしまっているし、こんなにフィルムの値段が高い状況で、現像代なども考えると、なかなか手が出ないのが本当のところ。でも、また、このカメラを助手席に置いて、ぶらぶらと車を走らせてみたいものだなぁなんて考えている。
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