2023-05-28

三日月と惑星と流星群

 5月23日、夜に西の空を見上げると、きれいな三日月と明るい星が並んでいるのが見えた。星は宵の明星、金星だ。それにしても近くで、きれいに並んでいる。月のすぐそばに星が見えることなんてあまり記憶にない。月がまだ三日月で明るい部分が少ないから見えるけど、これがもっと明るくなってしまうと見えなくなるのだろうなと思い早速、自宅の庭にカメラと三脚をセット。金星と月の上には結構明るい星が2つ、これまた並んでいる。この星も構図に入れてシャッターを切った。

 欠けた月を長時間露光すると、欠けている暗い部分もある程度写るものだが、この日はいつにも増してやけに明るく写っている。肉眼でもぼんやりと暗い部分が見えるほどだ。「なんだろな…」と調べてみると、この暗い部分に光が当たる現象は「地球照」と呼ばれるもので、地球の海や氷が太陽の光を反射して、月の太陽が当たっていない部分を照らす現象なのだそうだ。恥ずかしながら、こんな言葉は初めて知った。毎月起こってはいるものの、4月から6月の間がもっとも明るくなるという。どうりで明るいはずだ。英語ではearthlight、earthshine(地球の輝き)とも呼ばれていると書かれている。「地球の光」。英語の方が、響きがかっこいい。

 そして、月と金星の上にある2つの明るい星が、ふたご座のカストル(右)とポルックス(左)。カストルはカストルA、カストルB、カストルCの三重連星で、この3つの星はいずれも2つの星から成る連星なので、六重連星ということになるようだ。6つの星が、1つの明るい星のように見えている。ポルックスは1等星。この明るい星たちとさらに明るい金星、地球照を受けた三日月が西の夜空で揃い踏みなのだ。住宅街で撮ったので、星の数はそれほど写っていないが、それなりににぎやかな写真が撮れた。たまには夜も外に出て、空を見上げて見るもんだなぁなんて思った出来事だった。

 今回の現象を調べていたら、翌日の5月24日には火星と月が接近するという。じゃあ、今度は街明かりと撮ってみようということで、深川市音江町にある戸外炉(ととろ)峠で日没を待った。展望台の近くには、「となりのトトロ」にちなんだバス停とネコバスがあって、なかなかいい雰囲気だ。ちなみに、ここを走る路線バスはないらしい。

 まだ夕日の残照があるうちに撮ってみる。月の左にあるのが火星で、右側にあるのがポルックス、さらにその右隣がカストル。右下にある明るい星が金星だ。同じような時間でも、月との位置関係が変わっているのがおもしろい。水田が多い地域なので、田植えが終わったばかりの水田に空の光が反射しているのもいい感じだ。地球照が明るいせいもあるのだろうが、露光時間を長くすると月が満月のようになってしまう。

 ちなみに、露光時間を短くするときれいな三日月。写真って難しい…。

 ただ、この日は快晴で夜空に星がたくさんだ。月明かりがなければ、まさに満天の星に違いない。カメラを向けていた方角とは反対側に、長くゆっくりと尾を引く流星が流れた。ちょっと悔しい。しかし、撮った写真を後で確認してみると、肉眼では見えなかった流れ星が写っていた。

 「それではブログに…」と、この数日間の三日月と金星、火星の揃い踏みに関連して星のことをいろいろ調べていたら、翌日の5月25日にきりん座流星群が出現する可能性があるという。流星は本物の星が宇宙で猛スピードで移動しているわけではなく、宇宙空間にある砂粒のような塵(直径1mm~数cm)が、地球の大気に飛び込んだ時に大気との衝突により高温になって、大気や気化した塵の成分が発光(プラズマ発光)する現象。

 彗星が宇宙空間を移動する際、移動した軌道上にはそのような塵の粒が残されるのだが、その塵の粒が集まった軌道に、公転する地球が差し掛かると、たくさんの塵の粒が地球の大気に飛び込んでくる。その際に起きるのが流星群と呼ばれるものだ。地球が彗星の軌道と交差する時期はほぼ決まっているので、毎年同じような時期に流星群が出現する。

 ただ、今回のきりん座流星群は、流星群のもととなる塵を放出したリニア彗星(209P/LINEAR)が発見されたのが2004年と割と最近のため、新しい流星群だという。塵はそれ以前に放出されたものであり、放出量などのデータがないため、流星群の出現規模は不明だが、2014年に突発観測されて以来のチャンスだと書かれている。

 前日は流れ星も写っていたし、カメラは向けていなかったけれど、ゆっくりとはっきりと明るい流れ星も見た。「流星運が上がってキター」とかなりの期待を込めて5月24日の夕方、車を走らせた。

 今回の流星群は北の方角にあるきりん座が放射点。放射点というのは、流れ星が発生しやすい場所のこと。なので、北の空がなるべく開けている場所を探す必要があるということで、まず向かったのが旭川市の嵐山展望台。街灯のない、真っ暗な砂利道を登っていく。当然すれ違う車もないので「これはヒグマに遭っちゃうかも。音を出して、歌でも歌いながら写真撮るしかないな…」と思っていたら、案の定、展望台駐車場への入り口が「ヒグマ出没」の貼り紙とともに封鎖されている。思えば、前の日曜日に展望台と、少し離れた場所にある近文山という場所で写真を撮っていたのだが、近文山への道はいかにも出そうな雰囲気満載だったので「むむむ…」な感じだ。

 結局、明かりが無くて北の方角がある程度開けている場所がなかなか見当たらず、旭川市の江丹別まで走ることになった。着いてみると、雲もなく星空はバッチリ。あとはたくさん流れてくれることを期待するばかりだ。三脚とカメラをセッティングして、シャッターを切る。しかし、待てども待てども星が流れない。全然流れない。近くで、エゾシカが鳴いた。エゾシカも流星群を待っている、なんてことはないだろうから、絶望感で殺気立った(?)僕の存在を威嚇しているのかもしれない。

 それでも、肉眼では見えない流れ星が写り込むことを期待してシャッターを切り続ける。相変わらず、流れ星は1個も見れていない。最後に、きれいに見えている北斗七星の中を流れる流星が撮れれば、という淡い期待を抱きながら、頭の真上付近にカメラを向けた。すると、メチャクチャ明るい光がものモーレツな速さで移動していく。しかも、すごく近い。でも、飛行機やヘリコプターとは明るさがまったく違う。「もしかして、ISS(国際宇宙ステーション)かな」と思いつつ長時間露光した。KIBO宇宙放送局のサイト「きぼうを見よう」でISSの通過情報が公表されているのは知っていたが、ISS自体を見るのは初めてだったので、こんなに近くに明るく見えることに少し興奮した。実際に調べてみると、やはりISSのようだった。撮れた写真も、ISSが見事に北斗七星の中を貫いていた。

 そして肝心の流星群はというと…、この1枚のみ。少し短いけれど、写真の上部に写っている。ただ、これがリニア彗星(209P/LINEAR)由来の流星群の残骸(ピークは日中と予想されている)なのか、全く関係のない単体の流星なのかは当然わからずじまいだ。僕の流星運が上がっているのかどうかもちょっと疑問な、微妙な幕切れとなってしまったけれど、いろいろなことを知れて楽しい3日間だった。星空って、やっぱりいいなぁ。

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