2023-06-07

静かな海

 30年以上前、沖縄に住み始めたとき、驚いたのがやっぱり海。僕が見て育ったのは荒波の日本海で、しかも世界三大波濤と称され、波がテトラポットはおろか、灯台までへし折ってしまう北海道留萌市の海。夏はもちろん海水浴によく行ったが、海岸の砂は砂鉄交じりで黒く、そのせいか海の色も鉛色という言葉がピンとくるような「The 日本海」だ。だから、あの沖縄の白い砂浜と、緑っぽい真っ青な海を見た時には別世界に来たような感じがした。

 そして、海の静けさ。打ち寄せる波の音はするけれど、心地のいい音量。波はどこまでも穏やかで、沖縄の海を見て「凪」という言葉が初めてストンと胸に落ちた。娘が生まれたら「なぎ」という言葉を名前に使おうと決めていたが、娘が生まれてくることはなかったのでその出番はなかったが、それほど静かな海に心を奪われてしまっていた。

 引き潮で岩礁が海面から顔を出している海岸で、近くのパーラーから沖縄のラジオなんかが流れてきたらほんとにいい雰囲気だし、流れてくるのが島唄だったらもう最高、たまらない。休みの日にはよく、ひと気のない海岸で寝っ転がったり、暑くなったら泳いだり、ボーっとしたり、1日中海辺で過ごしていた。

 写真は座間味島だったか、阿嘉島だったか、どちらかの展望台のあたりから撮ったように記憶している。離島の海はまた格別で、ひと気のない場所や時期のひとり占め感がなんともいえない。聞こえるのは、静かに流れる波の音だけ…。なんだか、最近はめったやたらと「あっ」という間に時間が流れ去っていってしまう毎日なのだけれど、たまには海でも見ながら、ボーっとする時間もつくらないとな、なんてこの写真を見ながら思ったのでした。

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