2023-11-10

朝焼けの海に立つ

晩秋の夜明け前、
大地が真っ白な霜に覆われる。
海岸に降りる木の階段にも霜が降り、
その上に置いた靴底がじわりと滑る。
吐く息も白く、冷たい空気が肌を刺す。

まだ碧い東の空には、
明けていく夜空を惜しむかのように、
そして、これから昇ってくる朝日を
歓迎するかのように、明けの明星、
金星がひときわ明るく瞬いている。

水平線近く、船の灯りが遠くに見える。
碧い空と、碧い海の間から、
橙色のグラデーションが広がる。
近くの消波ブロックのシルエットが、
淡い光の中に浮かび上がる。

低い空が橙色に染まり始めたころ、
一隻の船が漁場に向かって進んでいく。
碧から橙へ。今日という一日が始まる。
天空がその彩り、その姿を変えていく。
まるで新たに生まれ変わるかのように。

やがて、カモメたちが
海から突き出した消波ブロックの上で、
にわかにざわつき始める。
もうじき訪れるであろう夜明けを、
長い間待ち望んでいたかのように。

太陽が水平線から顔を出す。
昇り始めた太陽は、
その高さを上げるにつれ、
空、海、すべてのものを照らし、
橙色に染め上げていく。

橙色に染まった海には、
太陽へと続く光の道が伸びている。
太陽のぬくもりが、寒さにこわばった
じんわりと僕の顔に伝わってきて、
体にあたたかいものがめぐり始める。

昨日までの自分と、今日の自分。
あのときの自分と、今の自分。
なんにも変わってはいない。
まわりが変わってしまったとしても、
僕は僕のままこれからも歩いていく。

いつもと変わらない風景。
特別ではないけれど、
たった一度きりの今日という一日。
今日も僕は僕のままでありたいと
願いながら、朝焼けの海に立っている。

(撮影地:北海道白老町)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


関連記事