2023-04-22

JR留萌本線一部廃線 番外編 ~瀬越浜にて~

 JR留萌本線の廃止とは直接的な関係はないのだが、留萌駅から増毛方面に向かってひとつ目の駅、つまり留萌駅の隣駅、瀬越駅の写真が出てきたので、この駅について書いてみる。

 JR留萌本線の留萌~増毛間は2016年12月4日に廃線となった。僕自身は増毛方面の列車に乗ることがほとんどなかったので、列車の思い出はほぼないのだが、この駅のすぐ前にある砂浜には何度か遊びに行っていた。このあたりの海岸は急に深くなっているということで遊泳禁止だったが、駅から海に向かって右手側、線路と浜辺の間にゴーカートのコースがあった。小学校に上がる前のことだから、非常におぼろげで、ゴーカートに乗ったかどうかも定かではないのだが、ちょっとしたレジャー施設というか、食堂なんかもあったように記憶している。

廃船と錆びた沿岸バスの車両が夕焼けに染まる。この左手にゴーカートコースがあった

 小学校に上がると、この砂浜に自転車で友達と投げ釣りに来たことがあった。僕はまったく釣れずボウズだったが、友達がウグイを釣った。ウグイは小骨が多く、味もあまりおいしくないので、普通は持ち帰ることはないが、その友達は持ち帰って食べるという。ビックリすると同時に、子ども心になんだか切ない気持ちになったのをおぼえている。このころにはもう建物もすっかり廃墟になっていて、ガードレール代わりに乗用車のタイヤを半分埋めたアスファルトのゴーカートコースが寂しく残るばかりとなっていた。

 そんな記憶が頭にあって、大人になってからは何度か海の写真を撮りにこの浜に通った。夕陽に照らされた、日本海の浜辺の廃墟感がなんとも郷愁を誘う。ふと見ると、お地蔵さんが立っている。カラフルな布をまとい、遠くを見つめて立っている。僕が小さいころ来た時よりも、もっと前から立っていたのかもしれない。浜の安全を守るお地蔵さんなのか。建立された経緯はわからない。

 冬、留萌はよく吹雪く。風が強く、海の波は猛り狂ったように打ち寄せ白い泡状になる。海岸にはその泡「波の華」が風に舞う。その波の強さは強烈で、留萌の海は「世界3大波濤」のひとつとされていて、防波堤に積まれた巨大なテトラポットがポッキリと折れてしまうほどだ。数年前には灯台ごと海中にもっていかれたこともあった。ものすごい風に、冬は雪が横殴りに吹き付ける。前が見えなくなるホワイトアウトになることもしょっちゅうだ。留萌に住んでいたころの雪に対する僕個人の記憶では、上から下に向かって真っすぐに、しんしんと降り積もるというものではなく、風混じりに斜めもしくは横殴りに吹き付けるものというイメージが大きい。強烈な風に雪が混じるので、本当に「息もできないくらい」というのが大げさではない表現で、その強烈さが僕のイメージを作り上げてしまっているのかもしれないが、決して大げさではないことは、留萌に住んでいる方であればわかっていただけると思う。

波が岩に当たって大きな波しぶきを上げる黄金岬

 夕暮れの3つの写真と黄金岬の写真は、僕としては珍しく撮影データが記されていて、1994年11月撮影と書かれている。瀬越駅はこの後建て替えられたようで、廃線時の駅舎とは別物だ。そして、その後に写したものがもう1枚。いつ撮ったのかはもうわからないが、お地蔵さんがまとっている布がボロボロで、今にも引きちぎれんばかりになっている姿に「こんなになっても、まだ立ってるんだ…」と妙に感動してシャッターを切ったのを憶えている。晴れの日も、雨の日も、風の日も、雪の日も、海を見つめながら立ち続けてきたあのお地蔵さんは、今もまだ遠くを見つめながら立っているのだろうか。

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